大阪のワーグナーガラで幸せに頑張ったあと、二期会タンホイザーの稽古場に戻り、通常はない2幕にも出番があったりしたものですから、事前に想定していたよりも稼働日も多く、ありがたく忙しくしておりました。そして、久しぶりのオフ日が終わろうかという2月頭のある日、メール着信。
新国ワルキューレの出演依頼でした。震災の折にカヴァーが本役に繰り上がり、そこを埋めるために以前のカヴァーだった私にお声がかかったことがあるものの、いきなりの本役依頼でびっくり。稽古開始はタンホイザー本番の3日後からで、あと2週間半!そしてワルキューレを前に歌ったのは3年前。色々なことが脳裏をよぎりましたが、ええい!泰次郎先生のためだ!と心を決めて、承諾のお返事をいたしました。その間3分ぐらい(笑)。わたし、こういう時の決断は速いんです。
とはいえ、タンホイザーは通し→舞台稽古と進む段階で、拘束時間も長く、実質はあまり日数がないのも確か。早速予定を整理しまくり(皺寄せは全て生徒に…申し訳ない)、コレペティ予約を入れまくりました。
譜面を開いてみると、何箇所かは「わ」の会でやっててなんとなく記憶が新しいところもあるものの、「あーここは苦戦したな」とか余計な記憶ばかりで、パッと思い浮かばないところも何箇所もあり、本当に間に合うかな…と不安もよぎりましたが、もう返事しちゃったのでやるしかない。
そんな切羽詰まった状況なのに、マスクで演技しながら歌いまくったため(ヴェーヌスパリ版はハードなのです)頭痛でまる2日寝込むという気ばかり焦る事件もありました…。無事に復活後は、タンホイザーとコレペティ(個人稽古)を行ったり来たり。実際にピアノ弾いていただいて歌ってみると、記憶になかったような気がしてたところもどんどん蘇ってきて、なんとなくいけそうな気が(苦笑)。2月中旬からはキャスト変更も発表になり、「わ」の会でドイツものの世界にお誘いした厚子ちゃんがジークリンデに挑戦とか(初役ウソ疑惑があるぐらい素晴らしい!)、マエストロ変更とか、だんだん状況が見えてきました。
新国オペラの再演は稽古期間が2週間と決まっていて、実質稽古場でやれるのは1週間ほど。その間に全ての段取り稽古が終わるということです。なおかつコロナ対策での色々な変更もあるし…ということは、元からある段取りをそのまま覚えればOKではないわけです。私も急に頼まれたからといって、甘えたことは言えないわけなので、できる限りの準備はして稽古入りしました。妹たちの名前を覚える、とかね(笑)。ちなみに私の譜面には、びわ湖の時のワルキューレたち2組の名前も書いてあります。懐かしや…。
お稽古に入ってからは、もう一気呵成という感じでした。セット組みの関係もあって、2.3幕をやってから1幕稽古だったので、私はやっと久しぶりの休み!身体のメンテナンスしたり、譜面を見ずにぼーっとしたり(笑)したら、オケ合わせ!そしてさらに1日オフを挟んでの舞台稽古へ突入です。
稽古開始時、舞台稽古開始時と2回のウイルス検査、こまめな消毒。広々した楽屋割。演出の変更。動きの制約。マスク!!色々と勝手も違い、作品が長いためインテンシヴに詰まった稽古日程。そんな中でも、スタッフの皆さんがなるべく負担が少なくなるようにと心を砕いてくださっての稽古でした。
重い盾を持ち運んでいるうちに、左腕だけ力こぶができるようになりました。そして、ラインの黄金でツルツル滑りまくった懐かしい床との再会😆。ミヒャエル父さんとの親子関係も深まってきて、毎回3幕は心が忙しくなっております。
いよいよ明日から本番!びわ湖リングの時にじっくり1年以上かけて仕込んだおかげで、短期間で戻せたし、びわ湖の稽古でたくさん深められた財産で、今回は余裕が持てました。過去のわたし、頑張ってくれてありがとう!
5回の本番、みんなで丁寧に大きな物語を構築してお届けしますので、どうぞ皆さまお楽しみに!!
この記事へのコメント
玉村 稔
玉村です。14日はすばらしいワルキューレでした!
3年前のびわ湖も見事でしたが、今回の池田様の情感あふれる歌唱は、これまで聴いてきた多くのソプラノとはまったく違う、繊細でういういしい新しいブリュンヒルデの誕生でした!
そして小林厚子様のジークリンデも素晴らしかった!2幕の≪受胎告知≫で、池田様のジークフリート命名に感動した小林様の歓喜の O hehrstes Wunder! Herrlichste Maid! には涙でした。これまで小林様はイタリア・オペラしか聴いておりませんが、今回は本当に初めてのワグナーだったのでしょうか、池田様の「アツコリンデは初役ウソ疑惑があるぐらい素晴らしい!」に同感。そして藤村様のフリッカの貫禄もすごいし、今回の女性3名は壮絶的名演でした!!
池田様のブリュンヒルデにシビれて帰宅後、池田様の「凝縮」の≪過去のわたし、頑張ってくれてありがとう!≫には感動しました、当方も唱和します、2009年の荒川バイロイト以来の池田様の急成長驚き≪こんな素晴らしい歌唱をありがとう!!≫
来年のびわ湖はパルシファルですね、今後の池田様のますますのご活躍を期待しております!
ぴよきち
いつもコメントありがとうございます!
>そして小林厚子様のジークリンデも素晴らしかった!池田様の「アツコリンデは初役ウソ疑惑があるぐらい素晴らしい!」に同感。
ですよねですよね!!
こんな短期間に初めての役をあそこまで仕上げてくるなんて!と、改めて尊敬です。本当にコツコツと、文字通り毎日コーチと勉強している厚子さんをみると、私も負けていられない!と奮起しちゃいます。
通常通りでも、再演は稽古が短くて大変なのに、本当に全員素晴らしい協力体制で乗り切って来れたなあと思います。明日の千穐楽も丁寧に、そして楽しんできます!
渡辺すみ子
ぴよきち
>渡辺すみ子さん
>
>初めまして。土曜日にワルキューレを拝見しました。クラシックのコアなファンながらワーグナーの通しは「私には無理」と決め込んで一度も見ずにいたのを、知り合いにお誘いいただいて、ネットでストーリーなど理論武装してドキドキしながら出かけたのですが、素晴らしくて大感激でした。最後はもう涙、涙。他にどんなものに出演されているのだろう、とググってツイッターからここにたどり着きました。今後のますますのご活躍を楽しみにしています。できればまたワーグナーでお会いしたいな。なお、私大学の同窓生(私の方が先輩)です。私も慶應の専攻とは全く違うことを生業にしています。笑