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研修所でも人手の足りない演目でちょっとメゾの役を歌ったりしまして、少しリリックなレパートリーを試したり、メゾの役を試したりしていました。最終的には、意外とメゾを歌ってるときが体が楽なような気がして、メゾかなあ…と思い始めました。その頃、サントリーホールでオペラアカデミーというレッスンを受けられる制度ができ、ホールオペラの演目のアンダースタディをしながら学ぶことができたので、それに応募してみました。メゾであることには異論がなかったのですが、「バッハとかモーツァルトとかロッシーニがいいところだから、そのへんを勉強せよ」と言われ、中音域のアジリタなどを一生懸命練習したものです。私は立ち(オペラの演技の段取り)を覚えるのが得意だったので、その日いないキャストの代わりに動いたりすることもありました。そうやって実地で勉強しつつ、個人レッスンは一時中断。なかなか「この人だ!」と思える人に巡り会えなかったので、しばらくは仕事をしつつ独学していました。その頃はまっていたのが、Anne Sofie von Otterです。美しく品があり、正確かつ音楽的なアプローチがとても好きで、CDを集めてはレパートリーを片っ端からさらってみたりしました。CDと一緒に歌って、ブレスの感じをまねしてみたり(笑)。
この頃、どうしてもヨーロッパに行ってみたくなり、夏のモーツァルテウムの講習会に参加しました。スウェーデン人の名メゾソプラノKerstin Meyerのクラスをとることができて、短いながら毎日レッスンを受けることになってうれしかったです♪ソプラノかメゾかで悩んでいるという話も相談にのっていただきました。
そのときに言われたのは、「声の感じの可能性では、イタリア圏ではリリコのソプラノとかドラマティックソプラノという方向と思われるのではないか。ドイツ圏にはハイメゾという声種があるから、その辺でもぴったりはまるでしょう。私がみたところでは、あなたの気質的に、舞台の中央でおっとりアリアを歌うより、いろいろ芝居をしていく方が好きなのではない?だったらハイメゾとして、ズボン役や悪役をやるのはとても向いているんじゃないかと思いますよ」とのこと。
日本の先生には、声以外の要素でのアドヴァイスをいただいたことがなかったので、これはとても新鮮な切り口でした。確かに、オペラ歌手というのは役者でもあるわけなので、これは重要なファクターですよね。声と気質がいまひとつあわないと苦しいけど、私は確かにハイメゾ業界の役が好きでした。
ちょうどvon Otterも、バロックなども歌いますが、ばらの騎士のオクタヴィアンなどを当たり役としているハイメゾであるわけなので、心おきなく「勝手にOtter弟子」として自習を続けていくことにしました。
二期会の合唱エキストラとしても、ソプラノからアルトに移籍、そこそこ経験を積んできたので、たくさんのすばらしい公演に参加することができました。N響の定期やいろんなオペラの公演、すばらしいソリストや指揮者と一緒に舞台に乗れるのはとても楽しかったです。
97年に新国立劇場が開場し、こけら落としの演目のひとつ「ローエングリン」に合唱として参加することになりました。そのお稽古場で、衝撃の出会いをしたのが、今の師匠である小山由美でした。日本人キャストのオルトルートを歌っていたのですが、稽古の最初から最後まで圧倒的な音色とオーラあふれる歌、そして朗らかで気さくな笑顔。「こ!この人だ!!」とお稽古場で一目惚れ(一耳惚れ)?公演中はとても大変。ダブルキャストだったし、合唱指導はバイロイトの合唱指揮のカリスマNorbert Balatschさまでしたし。これはこれでものすごく鍛えられたし、思い出深い公演です。その公演が終わって、翌年あけてすぐに、二期会公演のタンホイザーがありました。そのときにVenusを歌っていた師匠を、勇気を出してナンパ(笑)。「あの…お電話していいですか?番号教えてください」←怪しい人である。
かくして98年頃、いまの師匠に弟子入りしちゃったわけなのでした。
5に続きます。
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